SPACE10

SPACE10は、人の暮らしと地球の環境を改善するために2015年、デンマーク・コペンハーゲンに創設されたリサーチ&デザイン研究所。

SPACE10が研究しているのは、近い将来に人類と地球の環境に影響をおよぼすと予想される主要な社会的変化について。これらに対する革新的な解決策を見出すためのリサーチとデザインを行っています。

SPACE10はつねに「自分たちよりも賢い人たちと一緒に仕事をする」ことを心がけています。そのため、世界中の先進的なスペシャリストやクリエイターのネットワークと連携してプロジェクトに取り組み、研究結果やアイデアをすべて公開しています。また、定期的に展示会や講演会、ディナー、上映会などを開催。人々と交流し、想像力を刺激し、視点を多様化させ、私たちのミッションを前進させることを目指しています。

SPACE10のプレイフル(遊び心のある)リサーチプロジェクトのひとつである「Spaces on Wheels」(車輪のついた空間)は、自動運転車の未来を探求しています。未来の車について考える際、SPACE10の研究を実際のデザインに落とし込むことが重要でした。そこでf°am Studioと共同で従来の車を再解釈し、より充実した「車輪の上の生活」を実現する方法を探りました。その結果誕生した、Spaces on Wheelsを構成する7つのデザインを以下にご紹介します。

2014年に教育系ブロガーでYouTuberのCGP Greyは、「自動運転車を車と表現するのは、最初の車を機械仕掛けの馬と呼ぶようなものです」と述べています。自動運転車が持つ本当の可能性とは、私たちがハンドルを握ることなく運転できることではありません。むしろ自動運転によって「空間ごと」移動することが可能になり、その自由な時間で私たちができること、そして体験できることなのです。

ある意味、この前人未踏の目標を実現させる可能性を探ることが同プロジェクトの出発点でした。SPACE10での構想段階では、出発地点から目的地への移動だけに集中する必要がなくなった私たちが車内でどのように他者と交流し、どのように街を体験できるかということを自問しました。私たちが最初に考えたことは次の3つ。「従来の車の概念を覆す」「少なくとも車輪は必要」「優しく人間的な車であるべき」

一方でf°am Studioの出発点は少々違ったものでした。それは人と人との会話を大切にしながら未来を想像すること、個人が表現できる空間を提供すること、そして必ずしもソーシャルメディアを通じたバーチャルなコミュニケーションではなく、私たちが望む本物の対話のためにデザインすることでした。

f°am Studioのビジョンとプロセスについての詳細は以下をご覧ください。

私たちが描く未来とそのデザイン

「私たちは『会話型』の未来をイメージしています。日常生活には良いことも悪いこともあるでしょう。決して全体主義的ではなく、また完全に自由でもない。なぜならあらゆるものは複雑につながっており、すべてのものが多様な個性とありふれた性質を併せ持っているからです。インクルーシブでオープンでありながら、同時に極めて人間的。群れても一匹狼でいてもいい。未来の私たちは自分の願望を自由に表現できるのです。

さまざまな価値観が交差するこの会話型の未来を視覚的に探求したとき、それが親しみやすく心地良いものでなければならないと私たちは考えました。ただし、同時に何かを伝えられるものでなければなりません。『洗練されたSF的なデザイン』という、お決まりのパターンに陥るのは簡単です(多くの点で、それはそれでいいと思います)。しかし、そうした従来のルールをそのまま踏襲するのではなく、『私たちが求める会話とは何なのか』と自問しました」

モジュール化を世界共通に

「未来をイメージする際、その未来で人間がどのように生活できるか議論することも同じく重要でした。空間はどのように作られ、どのように使われるのか。その空間で現実的に生活できるようにするために、メーカーや個人をどのようにサポートし働きかければいいのか。さまざまな個性、目的、美意識に対応できるような使い方をするにはどうしたらいいのか。このような問いのもと、私たちは生活のための新たなプラットフォームとなるモジュラーシステムの開発に着手しました。

モジュラーブロックで構成した移動空間を世界共通にするという発想から生まれたモジュラーシステムによって、あらゆる使い方を想定した空間のカスタマイズが可能になります。これはメーカーやデザイナー、ユーザーのスタイルや目的によって外観や使い方が変わるという、デザインの自由度を高めることにもつながります。たとえば『カフェ』を作る場合、個人経営のこぢんまりとしたお店と世界的有名なチェーン店の空間は、モジュラーブロックを自由に組み合わせるという同じルールを使用しながら、まったく異なる形になるのです。

こうして、多様で多元的なオープンシステム、つまりそれぞれの表現が展開できるプラットフォームとしての移動空間にたどり着いたのです」

空間の定義

「モジュールのサイズを60×60cmに設定することで、従来の道路の幅に合わせて最大4個まで並べて組み合わせることが可能になりました。また、各モジュールを電動化することでプラットフォーム上にエンジン用のスペースを確保することなくデザインできるようにしました。車輪も多軸回転できるため、大型車でもスムースな走行が可能。車内の高さも2m以上とゆとりがあるため快適です。そのため日常生活のさまざまなシチュエーションに対応することができ、結果として車内の空間を最大限に活用できるようになります。さらに幅より高さを重視することで車体が道路を占領することがないため、交通渋滞の緩和も期待できます」

アーキテクスチャー

「このアイデアを表現し披露する上で、この移動空間が存在する環境のデザインが重要になりました。状況を設定することで、私たちが探求している未来のアイデアとの接点を確立するのに役立ちました。

私たちはモジュールと同じ方法で環境のデザインに取り組み、規範的でなく制限のない空間を作りたいと考えました。そして『アーキテクスチャー』という概念にたどり着きました。既存の空間の雰囲気を正確に再現するのではなく、普遍的な空間を想像させるために建築の形態や素材をコラージュしているのです」

デザインの探求

「私たちにとってデザインとは、挑戦的でありながら遊び心のある探求です。私たちが作品をつくるときは、何度も何度も作業を繰り返しながら行います。遊び心を持ってデザインの世界に迷い込み、一歩ずつその行為の意味を分析していくことが大切なのです。

デザインする際は『これを見てどう感じるか? これは何を伝えようとしているのか? これはどのように活用されるのか? 斬新すぎるか、それとも陳腐か?』と自問しなければなりません。

この移動空間について考えたとき、私たちは安全なものから不条理なもの、そして笑えるものまで、興味がそそられるさまざまなものを調べてみました。そうすることで自分たちの作品が洗練されていくのです。『こうしたらどうなるだろうか?』と自問することで、新たな解決策にたどり着くことができるのです。そこからが本当の意味での議論の始まりです」