デンマーク在住のRikkaさんがお送りする北欧の便りシリーズ。

前回は私の身の回りにあるサスティナビリティを紹介させて頂きましたが、それに続いて今回はもう少し大きな範囲で、デンマークのある村の環境問題への取り組みやエコビレッジについて少しご紹介したいと思います。

前編『なぜデンマークがサスティナブル先進国と言われるのか?持続可能な社会へ向けての生活とは (前編)』はこちら

人口600人の村全体で環境問題に取り組むプロジェクト

最初にご紹介するのは、コペンハーゲンのあるシェラン島からさらに南のロラン島に位置する村、Horslundeという人口630人(2020年現在)の村で行われているプロジェクトについてです。デンマークで一番大きな太陽電池設置エリアもこの村にあります。

Horslundeの中心部。茅葺(というか麦藁葺)の屋根の建物。

この村は住民会議で再生可能エネルギーを可能な限り使用していこうと決めて取り組んでいます。一方このプロジェクトの背景の一つには、田舎の行政区画の統合で自分の町や職場がどんどん無くなっていってしまうため、地元を活性させるという目的もあったそうです。

一般的にデンマークの田舎では50〜100年前からの伝統的な建築様式の家が今も住居として普通に存在しています。この村でも同様、断熱がきちんとされていない、暖房も石油からのオイルを使ったりなど昔ながらの家の作りのため、これからの環境に配慮した生活にはあまり適していない場合も多いです。。

そこで、この村では住民の家の改装(太陽光発電機を設置、新しい断熱材の導入等)に25%の補助金を設ける、専門家からの再生可能エネルギーをどのように取り入れていくかのアドバイスを受けられるようにするなど、住民が積極的にこの活動に参加できるよう工夫されています。

Horslundeを訪ねた時に、地元の公立小学校を見せて頂いたのですが、ペレットという圧縮された木のチップを使用した温熱器を使い太陽光や地熱を利用して学校の施設全体の暖房を稼働させていました。また、学校の施設管理のスタッフの方はすべての教室や体育館の設定温度の管理を手元のデバイスでできるようにしてありました。学校の授業でも学校の設備と再生可能エネルギーや環境問題に関するテーマが設けてあるそうです。

同じく公立の幼稚園も太陽電池や地熱での資源活用を取り入れています。子供の頃から身近にサスティナビリティを感じて成長することは将来的に自分が自分の環境に配慮して生きていく必要があるという事を実感しやすいのではないでしょうか。

Horslundeの太陽光電池の設置エリア

村の自治会長さんによると、新しい住民が越してくると、村の取り組みや買い物の時に使えるエコバッグを一緒に配布するそうです。デンマークではほぼ全てのスーパーや小売店でもレジ袋が有料なので、自前のバッグは欠かせません。こういうささやかなサービスも住民目線でちょっと嬉しい気がします。

日本からも注目されている、エコビレッジ

続いては、先ほど出てきたシェラン島、中心辺りから北の方に行ったFrederikssundという町の近くに位置するSvanholmというエコビレッジをご紹介します。

エコビレッジとは:エコロジー(自然環境保全)とビレッジ(村)の合成語。持続可能性を目的としたコミュニティの事。人間の生活と自然界の調和を考えられており、自然環境に悪影響を可能な限り与えないようにした生活をしています。例えば、再生可能エネルギーの使用、家畜や土壌への負担を軽減する畜産・農業の選択等です。

機会があって住民の方にこちらのエコビレッジの案内をして頂いた事があるのですが、とても面白いものでした。ここはショップ・カフェも併設されていて、飼育されている牛のミルクで作ったアイスクリームを食べることができたり、定期的に施設内のガイドツアーなども行っています。最近ではコペンハーゲンのサスティナビリティに配慮した食材のお店にも野菜などを卸しているそうです。

案内して頂いている最中に出会った子牛達がすごく可愛かったです

案内してくださった方のお話では、ここのコミュニティ(コレクティブ)は1981年から有機農業を目的とした人々が集まって作ったもので、家族だったり単身だったり、様々なバックグラウンドのある人が共同生活をしています。食堂もあり、調理などの当番制があります。何曜日は野菜だけの日、というのもあるそうです。こういったコミュニティは宗教的なつながりを想像されたりもするけれど、そういうことは無い、との事でした。どういう風にここに住むことができるのか、は住民会議で決められるそうです。

私はここの存在は日本に住んでいた時に、ある若い仏教の僧侶の方が短期的にここに滞在して色々なことを学んだと聞いて知りました。そのほか、日本からもここの共同生活のやり方や農業を学ぶために滞在する方もいらっしゃるそうです。

スーパーやレストランのオーガニックへの取り組み

オーガニック製品は、化学的なものをできるだけ使わず、環境負荷をより少なくし、自然を大切にするという観点から、デンマークでは何年も前からスーパーでオーガニックの製品が扱われています。

コペンハーゲンなど大都市圏でのオーガニックブームもありましたが、今は落ち着いている気がします。オーガニックというと高額で取りつきにくいという感じがありますが、近年ではディスカウントスーパーなどでもそれぞれ独自の自社オーガニック製品を展開しており、手に取りやすくなっています。小麦粉や野菜など、原料系のものであれば値段もそこまでの違いはありません。

私個人で特に気になるのは肉類です。テレビのドキュメンタリーやニュースでスペースの無い場所に詰められ飼育されている鶏や豚を見ると、やっぱりそういうお肉よりは元気に幸せそうに生きてきたお肉を頂きたい、と私は思います。実際目の前で元気に走り回っていた豚のとんかつを食べたことがありますが、幸せの味(笑)がしました。

ちなみに、デンマークのオーガニックの基準はEU内でもとても厳しいそうで、これをクリアした製品には信頼の印、オーガニックマークがついています。様々なレストランや学校・高齢者施設の食堂でもこのマークが見られる場所が増えてきました。”どれくらいのオーガニック食材が使用されているか”の割合を示しています。

レストランのオーガニックマーク。全体でどれだけのオーガニック食材が使われているかを示します。

ところで、ちょっとたまにブームに乗ってなのか、オーガニックのコーラ、オーガニックのガム、のようなものはちょっと個人的に「そこまでオーガニック!?」と思ってしまうものもあります。そういった加工食品のオーガニックの是非はともかくとして、まずは個々の生活に密接した部分から、自分たちの食べているものや環境への配慮などを気づくきっかけが大事なのではと思っています。

北欧ではポピュラーなリコリスのお菓子もオーガニックマークつきで売っています。

今回は持続可能な社会に向けたデンマークでの生活の小さなことから自治体など少し大きな団体の活動について2回に分けてご紹介してみました。持続可能な社会、と聞くと言葉的に大げさな感じですが、何かインスピレーションになれば幸いです。

ABOUTこの記事をかいた人

Rikka

東京都出身。看護師・保健師。都内総合病院に勤務していたが、2010年、夫の仕事の関係で英語も話せないのにデンマークに移住。まずは環境に慣れるためとデンマーク独自の学校システムであるフォルケホイスコーレにて学生生活をスタートする。現在首都コペンハーゲンのあるZealand島の片田舎在住。Zealand内の総合病院にて看護師勤務を経験し、地域医療/福祉に目覚め、現在看護業務をしつつ、フォルケホイスコーレの非常勤スタッフも務める。 そのほか、北欧における難民援助調査の取材コーディネーション、美術館の所蔵品に関する翻訳、その他現地研修通訳などの経験あり。個人的な趣味は裁縫・美術鑑賞・古着収集など。カタツムリと猫が大好き。