デンマーク在住のRikkaさんがお送りする北欧の便りシリーズ。

今回はデンマーク人の家族や結婚観についてです。こちらに来て思うのは、デンマークの家族は縦のつながり(親子)よりも横のつながり(夫婦)が強いということです。一つの夫婦がずっと長く一緒にという意味ではなくて、パートナーの存在が子や親の存在よりも絶大に大きい印象があります。もちろん例外があると思いますし私の個人的な意見ではありますが、私が接した中でのデンマーク人の家族や結婚についてお伝えしてみようと思います。

元旦那の家族が揃ってクリスマスパーティに参加!?

このエピソードは私がデンマークで初めて体験した家族の集まりでのことなのですが、すごく印象に残っています。デンマーク人にとって家族って、と考えたのも恐らくこの体験があったからだと思います。

デンマークのクリスマスは日本のお正月という風に私は捉えているのですが、基本的に家族が集まってお決まりのクリスマス料理(おせち的な)を食べ皆で一緒に過ごす(帰省ラッシュあり)というのが一般的です。ほーら、お正月みたい。

(横にそれますが、クリぼっちの意味などをお伝えするとデンマークの皆さん盛り上がってくださいます。所変われば、ですね。)

さて、ある年のクリスマス、私はある恩師(女性)のお宅にお呼ばれしました。特別にご家族で過ごすところに私も入れて頂いたのです。その時に紹介された家族メンバー。恩師の元旦那と今の奥さんとその娘(母親違いの娘)、そしてその娘さんの彼氏、さらには恩師と元旦那との間の娘もいました。

え、元旦那?さらに今の奥さん?もうカオスです。そして恩師が言うには「旦那とは別れたけど、親友なの!一緒に仕事もしてるし。」とのこと。そんな複雑な関係の中で娘同士も仲良しだし、集まりの最中に彼氏のドッキリプロポーズとかもあったりしてみんな感動の涙!とかなんかもう私にとって色々印象深いクリスマスでした。

日本で私が知っている離婚とは、離婚してから元の配偶者はおろか子供にも会っていない、今はどこで何をしているのか知れない、別れて清々した、というような話しかなかったので、“別れても親友”という概念がとても新鮮でした。

むしろみんな再婚!?デンマークの結婚形態

デンマークの離婚率は、2018年度で46,5%(出典・Danmarks Statistik)と高いです。結婚したカップルのうち2組に1組は離婚するか、くらいのレベルに近いですね。デンマークでの私の周囲でも、離婚経験者は多いです。離婚への考え方に対して世代的な違いもあるのかもしれませんが、私は親が初婚という子供に会うとレアな人発見!という感じさえしてしまいます。

デンマークでは本当に様々な形態の家族がいます。デンマークでよくある家族で例えば、連れ子同士で再婚してさらに再婚した2人の間の新しい子供、という家族構成というのがあります。

また同性婚も認められているので、同性同士のカップルでさらに養子縁組や人工授精で授かった子供を育てている人たちもいます。日本のように戸籍を入れるという概念もないので事実婚の家族もたくさんいます。夫婦別姓も多いですし、バツなんとかという言葉はありません。シングルマザー・ファザーの家庭もたくさんあります。19,20歳のお母さんも少なくありません。そんなに数はないですが、婚外恋愛を認め合っているカップルもいます。本当に色々な形態の家族がいるんです。こういうのを見ると、家族とは?結婚する意味とは?と困惑してしまいます。

ではなぜこういう多彩な家族形態があるのでしょうか?それはデンマークの個人主義的な考えが根本的にある、また男女間の社会進出の差がそこまで多くなく経済的な自立をしているから(ほとんどが夫婦共働き)ではないかと思います。デンマークも和を重んじる部分はありますが、日本の場合の和を重んじるという考えとは違って周囲に迷惑をかけなければ割となんでもOKという感じがします。

そして、子供を育てるうえでの経済的な不安がそこまで大きくないところも大きな要因です。離婚しても自分の収入はある、児童手当てがもらえる、片親だった場合はそうでない場合より多くの支援や控除があるなども聞きます。こういった点から生活(主に経済的に)にも離婚に対する抵抗が少ないのではないでしょうか。一人でやっていけそうだったら我慢して今の状態を続けるよりも自分が幸せだと思える新しい生活を選ぼう!とスイッチできるのは理解できます。

ある素敵な友人の銀婚式。もちろんこういうカップルもいます。

デンマーク人にとっての「家族観」

デンマーク人はなんでも家族一番、という印象を私は職場で感じています。職場での個人的びっくりエピソードの一つに、子供の誕生日があるからこの日は休みにした!という同僚の話があります。また、自分の夫の60歳の誕生日(特定の年齢で大きめに誕生日を祝う傾向があります。)に休みを取れなかった、信じられない上司だ、という愚痴も聞きました。日本の職場状況を知っている私にとっては、むしろそれってあり??と衝撃。

それから、子供を迎えに行く時間だ!仕事終わり!とか。最初は驚きでしたが、それって実はごくごく普通の考えかもしれない、と最近は思うようになりました。日本で近年聞いてきた、ワークライフバランスって実はこういうことかもと考えるようにもなりました。

でもその反面、家族なのに割とドライだな、と思うところもあります。18歳になれば多くのデンマーク人は一人で暮らし始め、実家で親と同居を続ける人は少ないです。(近年はアパート等の家賃の高騰により実家住まいという若者も増えてきているようですが。)

私自身訪問看護の仕事にかかわっているので、人生の終末期である高齢者の方と接することが多いのですが、デンマークで家族メンバーのみで高齢者のケアをするという概念はあまり無いように思います。もちろん、夫が妻を、妻が夫を、というのはよくあるのですが、日本で言う老々介護、介護辞職は今のところ私は聞いたことがありません。というのも、自治体の看護・介護サービスが入ってくるからです。子供がつきっきりで、とか兄弟が同居してというのもめったに聞きません。協力はしてくれますが。日本から来た私にとっては、いや、全然楽でしょ!?と思うようなシチュエーションでも、もう無理!余裕全然ない!!そっちでやってよ!というお宅は結構あったりして、自分の親なのにドライな感じ。ちなみに“親の恩”とか“義理”のような概念もないようです。これもまた所変わればですね。

でも、介護というシビアな問題については、家族以外のプロフェッショナルが中心となっている方がかえってうまくいったり、ケアされている側の気も楽だったりする部分もあるので、良いとか悪いとかという簡単なくくりではない気はします。

デンマークに来てみて、家族の形の多様さに驚くこと多数で、家族とは?結婚とは?と時々哲学的に考えてしまったりします。でもあまり明るみに出ませんが、孤独に暮らしていて誰とも繋がりがない寂しさを感じているデンマーク人も多くいます。やっぱり明るい面もあれば暗い面もある、そういう中から自分が作りたいと思う理想の家族へ向けて、日々模索中です。まあ、デンマーク流で、なんでもあり!と、自分たちがどうあるのが幸せなのかを中心に考えていけるといいのかもしれませんね。

結婚前のバチェラーパーティーの一環。町の中で恥ずかしい格好で練り歩いていたりします。まるで罰ゲームのよう(笑)

ABOUTこの記事をかいた人

Rikka

東京都出身。看護師・保健師。都内総合病院に勤務していたが、2010年、夫の仕事の関係で英語も話せないのにデンマークに移住。まずは環境に慣れるためとデンマーク独自の学校システムであるフォルケホイスコーレにて学生生活をスタートする。現在首都コペンハーゲンのあるZealand島の片田舎在住。Zealand内の総合病院にて看護師勤務を経験し、地域医療/福祉に目覚め、現在看護業務をしつつ、フォルケホイスコーレの非常勤スタッフも務める。 そのほか、北欧における難民援助調査の取材コーディネーション、美術館の所蔵品に関する翻訳、その他現地研修通訳などの経験あり。個人的な趣味は裁縫・美術鑑賞・古着収集など。カタツムリと猫が大好き。