今回はホイスコーレについての後編ということで、ホイスコーレでは実際どういう風に毎日が進んでいくのか、またホイスコーレに通うメリット・デメリット、学びなど私自身や周りの体験談を交えつつ一例としてご紹介したいと思います(※前編はこちらよりご覧いただけます)。
あるホイスコーレでの1日の過ごし方
ホイスコーレの朝は早いです。朝ごはんは8時頃には済ませます。食事は三食学校の食堂で出てきますので、生徒はただ同じ敷地内にある寮から食堂に行けば良いのですが、学校によっては配膳などのお当番があるので係になったら準備のためもっと早く登校していなければなりません。また、朝ごはん食べない人もいます。
朝ごはんが終わったら朝会です。前編でも触れましたが、ホイスコーレ特有の30分くらいの朝会です。
その日の小さなお話や生徒のプレゼン、授業に関するインフォメーション等、そして歌集から歌を歌います。色々な歌を歌うにつれて、そのセメスターの人気曲などが出てきたりするのも楽しいものです。朝の眠たい時に無理やり声を出すと目が覚めてきてちょっと元気が出るのも良いです。
朝会後は朝の授業。大体2コマぐらいの授業があります。生徒それぞれ授業は事前に主専攻と選択授業、というカテゴリーで選んでいます。この主専攻にあたるのがホイスコーレ個々の特徴的授業だったりします(芸術系とか人文系とか・・・)。
授業は出欠を取られますが、欠席のせいでペナルティが課されるということはありません(あまりにも学校に来なければ教師面談はあります。でも、それも叱責を受けるというよりも話し合いです)。卒業できなくなるということはありません。そのため、残念ながら眠くて授業に来ない、学校集会に来ない、などというケースもあります。
その後昼食をまた食堂で。生徒もスタッフもみんなで一緒に食べます。食事に対して力を入れている学校は多く、様々な新鮮な食材を使ったおいしい食事が用意されています。有機栽培の材料に出来るだけ特化した学校もあります。
デンマークで一番大きな(つまり料理の種類がたくさんある)食事は一般的に夕食です(昼食の場合もあり)。夕食には暖かい料理やスープが出ますが、朝と昼は冷たい料理、簡単なパンと2,3種類の載せるものがついている、くらいのパターンが多いようです。ビュッフェ形式が多いので、隣のお皿を見ているとその人は何が嫌いなのか分かってきたりします。
午後は、授業の前に掃除の時間があります。様々な教室、寮の廊下や共有スペース(テレビのある部屋やシャワールームなど。部屋ごとにシャワーのあるところもあります)を持ち回りで掃除します。毎食後のお皿洗いの当番もあります。
基本的にホイスコーレは自分たちで何でもやるのが基本なので、お掃除・お洗濯などは自分たちでやります。もちろん、専門のスタッフもいて、やり方を教えてくれます。こちらの掃除のやり方は日本のやり方と勝手が違っていて、道具をどう使ったら良いのか最初私もさっぱり分かりませんでした。
初日は使用済みの食器を片付けておくワゴンがぐちゃぐちゃだったのに、お皿洗い当番が始まると急に使った食器の片づけが整然としてくるなどの違いがあります。みんな明日は我が身のような気分になるからでしょうか。
お掃除の後は午後の授業に行きます。場所によっては週に一回ほど学校集会(これは主に生徒が日ごろの出来事から問題提起したり、毎日の生活面のことを相談したりするもの)があったりします。
午後の授業が終わったらあとは夕ご飯。夕ご飯の後は特に授業などはないことが多いですが、学校主催のアクティビティが週1回ほど行われたり、生徒が提案して、みんなで映画館に行くけど行きたい人は〇〇時にここに集合、というイベントもあったりします。つまり、何かみんなで一緒にやりたいことがあれば自由に提案出来ます。
学校の中にはバーがあるところが多いです。基本的にアルコールについて学校では厳しく取り締まっており、平日に自室などで好きなようにお酒を飲むことはできません。その代わり、週末にはバーが開きお酒を買うことができ、パーティなども催されることがあります。
人種の違いか、単に私があまりアルコールに強くないからなのか、デンマーク人の生徒はすごくアルコールに強い!という印象が強く、飲みっぷりのいい人を見ているのは面白かったりします。また、教師やスタッフも普通にこういったパーティや飲み会に参加したりするのは、ホイスコーレの教師はいわゆる学校の先生とは違った、生徒との距離感の近さを物語っていると思います。
寝食を共にする、一つの大きな家族
ホイスコーレは寮制の学校ということから、ほぼ24時間誰かと一緒に暮らしています。それは普通の学校にはない大きな特徴の一つです。だから数か月経っただけでもものすごく仲良くなれます。当然、生徒はそういう学校の特徴を事前に知って入学してくるので、初対面でも友達を作るハードルは低いです。日本人の多く(私もそうです)は英語での日常会話に慣れていないケースが多かったりしますが、ルームメイトや他にも必ず生徒の誰かが助けてくれます。テンポよく話さなきゃ会話が続かない、ということもほとんど私は経験しませんでした。みんな待ってくれるのです。
逆にホイスコーレ以外の場所に出た時に、他の人のドライな対応に驚いたのを覚えています。そこで、「そうか、ホイスコーレがデンマークのスタンダードではないんだ」と気づきました。そういった経験もあり、ホイスコーレは初めての海外留学する方でもかなり入りやすい場所の一つだと思います。
デンマーク人にとっても、ホイスコーレは自分の可能性を試したり伸ばせる場所と言っている人もいました。特に社会性に関する自分の一面を成長させられる場所だと考えているのをよく聞きます。自分の内面が花開いていくのを味わえるという感じでしょうか。実際、客観的に見ていても入学時にはこわばっていた表情の生徒が卒業時には自信や笑顔に満ち溢れているのを見ると、こちらもエネルギーをもらうような気がします。
自由にともなう責任、責任にともなう自由
日本だと、学校はキャリアのために行くもの、卒業をしないと次に進めないという認識で行く場合が多いので、ホイスコーレでは、授業や生活に関して自由過ぎて最初は面食らってしまうところがあると思います。課外活動や授業で何かやりたければ、友達を誘ったり、教師に提案して実現させることが可能な場合がほとんどです。逆に、変な話さぼりたければ好きなだけさぼれます。ご飯も自分で作る必要はありませんし、良くも悪くも自分のやりたいことをやっていいと許可されている場なのです。
日本では「責任」というと、あまりいいイメージには受け取られないように思います。責任はできれば持ちたくないものではないでしょうか。
しかし、ホイスコーレで生活してみて、責任は自分の好きなようにできるものというポジティブな認識に代わりました。どのようにも自分の裁量でやりたいように出来るのです。それはとても自由、うまくいけば自信を感じられることだと思います。それを学べたホイスコーレという場所は、私にとってとても特別な場所です。
2回に分けてご紹介したホイスコーレですが、現在はコロナの影響でなかなか日本から留学することが気軽にできないかもしれませんが、機会が出来たら是非多くの方に体験して頂きたいと思います。
Text by Rikka