コミュニティ迷子からコミュニティづくりの中心に。 偶然の素敵なつながりから仕事や人生を豊かにしていくアイディアとは。

コミュニティをつくることが自らの居場所づくりに 今田:以前、まだほぼ初対面でお話した際、林さんが付箋を使ったゲ…

コミュニティをつくることが自らの居場所づくりに

今田:以前、まだほぼ初対面でお話した際、林さんが付箋を使ったゲームを提案してくれました。決められた時間内に、今関心のあることを付箋に書き出して互いに見せあい、相手が出した言葉の中から興味のあるものに、シールを付ける。そしてそこからお話を始める。ただそれだけなのに、短い時間で互いのことが少しわかったと感じることができたので。今回も付箋のゲームからスタートさせましょうか。

林さん(以下敬称略):いいですね。普通に話すだけでは出てこない話題について、短い時間で話すことができますからね。

——ふたりでそう言いながら、林さんと今田が付箋と丸いシールを分け合い、1分間かけて、互いに今関心のあるキーワードを出し合ったふたり。林さんが書いた付箋のなかで、最初に話題となったのは「コミュニティ」という言葉でした。

今田:コミュニティ、僕も関心のあるテーマです。
林さんは、プライベートでも仕事でも、コミュニティをつくったり、コミュニティを楽しんでいらっしゃる印象ですが、やはり関心が高いんですね?

林:そうですね。僕がコミュニティに関心があるのは、“コミュニティ迷子”だった時期が長かったからなんです。

今田:コミュニティ迷子ですか? それは意外ですね。

林:今、コミュニティに多く関わっているのは、どこか反動のようなものがあるんだと思います。僕は子どもの頃、転校を経験し、高校のときは韓国に留学、大学もアメリカで過ごしていて。みんなが当然のように入っているコミュニティに入れなかったり、逆にすごく気を遣われて必要以上に良くしてもらったり、自分にとってここはアウェーだと感じることが多かったんです。アメリカの大学にはゼミのような場所もなかったので、授業に出たら帰るだけ。そこで、何かできないだろうかと思い、始めたのがダンスでした。
その後、日本に帰ってきて大学院に通うんですが、日本の大学生を経験していないから、飲み会文化にもあまり馴染まなくて。そこでもダンスをすることで、仲間をつくることができた。就職後もダンスをやりたい人が結構いたので、自らコミュニティをつくりました。会社があった六本木ヒルズ内にサルサダンス部をつくったんです。日本人の男性はペアダンスに積極的でないので、友人が催すヒルズ内のランチ会に参加して、外資系の会社に勤める外国人の男性を誘って、足りなかった男性部員を集めたりして。

今田:なるほど。そうやってコミュニティづくりに関わっていくんですね。

林:はい。それに、ほしいものがないなら、自らつくればいいのかと思うようになりました。たとえば、自分でスタジオやイベントスペースをつくったのも、前職で動画事業に関わりたかったのですが、そのポジションにはご縁がなかったので、だったら自分でつくってやってみようと思ったからです。その結果、自分にとっての居場所ができたし、一緒に楽しむ仲間ができた。自分でコミュニティをつくることで、生きやすくなったという実感があるんです。

今田:コミュニティづくりへの関心は、苦手意識から生まれたと。

林:コミュニケーション能力がもともとある人なら、そんなふうに考えなくていいのかもしれません。でも、そうでないからこそ始めることができたし、今の仕事にもつながっていますね。

今田:ただ、コミュニティはつくるだけではダメで、育てていかなくてはいけない。そこにはまた別の大変さがありませんか?

林:僕はどちらかというと言い出しっぺ的な役割。あとは、メンバーで協力しあって、それぞれ得意なことを担当してもらうことで、続けていければと思っています。コミュニティのなかで活動すると、それぞれの特技や得意なことが見えてきますから、それを活かせばいい。苦手なことをやろうとしたり、無理を強いてもいいことはありませんからね。

今田:それは仕事にも通じることですね。

林:そうだと思います。その人がもっともパフォーマンスを出せるのは、無理やりやらされた仕事でなく、自らやりたいと思ったことや得意だと思っていることです。ですから、適材適所で活躍してもらえるようにという考え方は、仕事のチームでも活かせていますね。

今田:一方で、大変な仕事や、重圧のある事柄を林さん自身がやらなくてはいけないときは、どんな心持ちで仕事をされているんですか?

林:ストーリーの力を借りたりします。これはある人のインタビュー記事を読んで、「なるほど」と共感して、僕自身も実践していることなんですが。たとえば、学生の頃 CD のおまけを袋づめするバイトをやっていたのですが、それってただ淡々とやるには、つまらない仕事なんです。でもその時「僕は宇宙の一部で、この仕事でどれだけ宇宙とシンクロすることができるだろう」なんて想像して(笑)、ルーティンワークに、ファンタジーやフィクションの要素を入れ込んで、映画の登場人物のような気持ちで乗り越えるというようなことをやっていました。
自分自身のモノの見方や捉え方一つで、目の前にあるものの意味って結構変わるんです。だから、想像力を働かせること、フィクションを思い浮かべる引き出しが多いほど、自分を守ってくれるんですよ。

今田:それはおもしろい考えですね。

林:国や時代によっては、それは宗教の役割だったりするのかもしれません。でも僕にとっては、ストーリーやフィクションがその代わりをしてくれる。自分自身を物語の主人公だと考えたり、目の前にあることを大きな物語の一部として意味付けすることができたら、楽しく乗り越えることができると思います。

移動による違和感がアイデアの素になる

—— ここで再度、付箋に言葉を書き留めて、互いの付箋を眺め合うふたり。すると、林さんの書いた言葉の中に 「ずっと移動」という謎のキーワードが。この言葉に今田が反応します。

今田:「ずっと移動」って、どういう意味ですか?

林:ずっと移動していたいなぁと思っているんですよ(笑)。今いる日常から離れることは、ちょっとした違和感を生みますよね。それをずっと続けたらどうなるんだろうということに関心があるんです。今は仕事があるので、どこに行っても必ず帰ってくることになりますが、たとえばずっと移動していたら、ずっと違和感を感じ続けることができるのか、それとも移動そのものに慣れてしまって、なにも感じなくなるんだろうか、とかね。
移動による違和感は、私にとってはアイデアの素でもあります。新しい事業を始め、サービスの形を模索する中で、アイデアはあればあるほどいいし、それらを活かしたいと思うんです。

今田:旅には結構出てらっしゃるんですか?

林:そうですね。30 カ国以上は行っていると思います。

今田:すごいなぁ。そのなかで印象に残っているのは?

林:日本と違えば違うだけ面白いと感じます。例えば、キューバはよかったですね。国の社会システムが違うし、建前上はスポーツ選手も、近所のおじさんも、お医者さんも、みんな同じくらいの給料をもらって生
活している。そうなると、人はわりと好きなことをやるようになるんです。貧しさに対する不満は感じつつも、楽しそうに暮らしている。社会のしくみが日本と全く違うからこそ、気づくことがあったり、可能性を感じたり。面白かったですね。

今田:日本の日常と地続きでないところでないほうが、発見があったり、刺激があるということですね。

林:アイデアって、これまでとは違うことを体験することで湧いてくるのだと思うんです。だから、アイデアの種を探しに旅をしているようなところがあります。

今田:旅はぼくも好きです。でも、ずっとは難しいかなぁ。僕は旅先で刺激をもらったら帰ってきて整理したいって思うかもしれませんね。持ち帰る場所がほしいような気がします。

モノが場を仕切り、空気をつくる

林:持ち帰る場所ということでいうと、僕の家にはモノが全然ないんですよ。友人が部屋の写真を見て、引っ越したばかりですか?って聞くくらいです。家にあまりものを置きたくなくて、きれいだったらいいなくらいの感じなんですよ。

今田:モノを増やしたくないということですか?

林:そうなんです。ソファもなくて。妻は、ソファぐらいは買いたいって言うんですけど。

今田:ソファもない?

林:キャンプチェアがあって、そこに座っています。折り畳めるからいいんですよ。

今田:それは「ずっと移動」にも繋がる考え方かもしれませんね。“巣”のようなものをつくりたくないというような。

林:そうですね。“巣”はいらないという方針です。そのほうがいつでも、どこにでも移動が簡単ですから。インテリア会社の方との対談としては、なんだか恐縮なんですけど。

今田:いやいや、とても面白い。新鮮です。家具は“なくてもいい”というよりは、林さんにとっては“ないほうがいい”ということですもんね。ある意味、すごくこだわりがあるということ。いろいろな家具があることを気にするのが嫌だということですよね。

林:そうなんですよ。一番の関心事でないことには、なるべく気を取られたくないというような感覚です。ベッドだけは、寝心地にこだわっていいものを選んでいますが。それくらいですね。でもその一方で、インテリアや環境は、人の気持ちと密接に関係しているとも思っています。

今田:そうですね。光や、空間など、場所によって人の気持ちは全然違ってきます。

林:だからこそ、僕は家には何もなくてよくて。話をしたい、本を読みたいなど、やりたいことがあれば、それにぴったりの場所に妻を連れ出します。まぁ、妻は家にいたがりますけどね(笑)。

今田:(笑)

林:イベントスペースや、打ち合わせスペースなどにもこだわります。ダンスをする場であれば、ダンスにぴったりの床材を選びたいし、みんなで盛り上がりたいなら、テンションがあがる場を選びたい。場とコミュニケーションの関係はとても重要だと思うんです。
たとえば、人が交流するイベントをする際、飲み屋やスナックのように、バーカウンターになる板を一枚用意するだけで、コミュニケーションが生まれるから面白いです。メンバーの一人が、ママみたいな役割を果たしてくれた
り。モノが場を仕切ってくれて、場の空気や印象が変わるんです。それにバーカウンターであれば、積極的に誰かに話さなくても、ただ飲んでいるだけでいい感じになったりもする。おもしろいなぁと思います。

今田:なにか無理やり盛り上げなくても、仕掛け一つで人がラクにそこにいることができたり、自然と交流が生まれたりするんですね。それに、林さんは、無理やり人を動かすのではなくて、場づくりやしくみによって、自然に楽しみながら人が動く仕掛けをつくるのがお上手なんですね。

林:そうありたいと思っています。

人は“たまたま”が起きる場所に出かけ 出会った“たまたま”に気づく必要がある

今田:そうした考え方は、昨年立ち上げられた会社 ZAS の理念とも通じるところがあるかもしれないですね。

林:そうですね。曲がりなりにも、自分が納得できる道をここまで歩いてこられたのは、英語で言う「セレンディピティ」つまり偶然の出会いが大きく影響していました。たとえば、前職に入社できたのも、たまたま行った海外のキャリアフォーラムで、最初の上司になる人と出会って話したことがきっかけです。妻との出会いも、たまたま企画したクリスマスパーティで、たまたま受付をしていて、その後他のイベントでも偶然あって、都合のいいように誤解してと (笑) 。人生“たまたま”で続いてきたという想いがあって。もしそうなら、人は“たまたま”が起きる場所に出かけて、出会った“たまたま”に気づく必要があります。僕自身、そうできたことで「人生がいい方向に変わった」という実感があるので、他の人にもそういう“たまたま”に気づきやすく、アクセスしやすいしくみを考えたいんです。

今田:なるほど、それが、 「“セレンディピティ = 偶然の素敵なつなり”で、人生を豊かにすること」という ZASの掲げる理念につながるのですね。

林:そうですね。知らないことや新しいことって、時に怖かったり、勇気がいります。ですから、テクノロジーやノウハウの力で、怖さを軽減したり、一歩踏み出す後押しをしたりできないかと思っているんです。それができれば、楽しく暮らせる人はもっと増えるのではないかと思っています。

今田:林さん自身の経験や実感がサービスのアイデアにつながっているんですね。
僕は、「暮らしが豊かになると、もっと仕事が楽しくなる。仕事が楽しくなると、もっと暮らしが豊かになる」という想いがあるんですが、仕事と暮らしについてはどのように感じてらっしゃいますか?

林:僕にとっては、暮らしと仕事は、分けて考えることができないくらい一体となっていますね。

今田:ある意味、大手 IT 企業にいれば、職や暮らしは安定すると思うんですが、そこを出てでも立ち上げたいという林さん自身の強い想いがあって始められたわけですから、暮らしと仕事は密接につながっていますよね。

林:そうですね。自分の思うことを 100%やってみたいという思いがあったから、自ら会社を立ち上げました。それに、本当にみんなに喜んでもらえることをサービスとして提供できれば、自分自身も楽しくなれる。起業したことで大変なことがあったとしても、そういうものを乗り越えたからこその楽しさもあると思うんです。
人生、明日死ぬかもしれないし、あと 200 年生きるかもしれない。だとすると、ただ漫然とは生きたくないし、一方で刹那的すぎるのも違う。明日はないかも、でも 200 年生きるかも。そんな感覚を両方持ちながら、毎日楽しく生きていきていけたらいいなと思っています。

今田:200 年とおっしゃるところに、林さんらしさがありますよね。

二人:(笑)