『自分の好きなものに敏感に。フードスタイリストいわさあやかさんインタビュー』

eläväniでも人気だった季節のレシピ連載で素敵な料理の数々を紹介してくださったフードスタイリストのいわさあやかさん。パリと日本を行き来しながら働く、いわささんがフードスタイリストになるきっかけや、食に対する思いを伺いました。

いわさあやかさんの季節のレシピ一覧はこちら


”やれたらいいな”じゃなくて、”やる”っていう自己暗示を自分にかけていました

-連載では素敵なレシピをたくさんご紹介いただきありがとうございました!いわささんがフードスタイリストを目指したきっかけは何ですか?

いわさ:小学生くらいの頃から、母の影響もあり家でお菓子を作るのが好きだったのですが、レシピ本や、雑誌に掲載されているレシピページを眺めることそのものが大好きで。こんな本やページを作る、発信側の仕事がしたいなぁと気づけば漠然と思っていました。ただそういうお仕事って叶え方に定義がないのだということにも、10代のうちにどんどん気付いてきて。

地元の高校を卒業してすぐに、上京後は製菓と料理の専門学校に入学しました。東京に出ることでめちゃくちゃ可能性がひらけるはず!って当時は単純に思っていた気がします。

ただ、半年ですぐ辞めちゃったんですよね。その当時代官山のカフェのバイトをしはじめたところだったのですが、それがとっても楽しくて。しばらくは学校にも通わずなんとなくフリーターのような生活を送っていました。もともと人見知りで友達を作るのも苦手で、学校でもなんとなく馴染めないまま半年で辞めてしまったことは、その間もずっとコンプレックスでした。

とはいえ学校を辞めたあとも、お菓子作りや食が好きという気持ちは強くあり、叶えたい夢だって変わっていませんでした。ただ、技術も知識も自分で何かをスタートするにはまだまだ全然足りないと思っていて、数年くすぶったあげくにやっぱりあらためて勉強したいと思う気持ちが捨てられなくて、製菓の専門学校へ再入学ました。

同い年の子たちはちょうど大学卒業、就職していくタイミングで同級生は年下の子ばかりで。やっぱり人見知りは変わらずだったし、勝手になんとなく引け目を感じたりもしていました。一人で過ごす時間も長かったし授業が終わったら好きなお店でアルバイトして、当時自分よりも大人の方々と関わる時間が多かったです。同年代の友達もほとんどいなかったし人付き合いもすごくクローズドで。今思えば学生らしいことももう少ししておけばよかったかな、なんて思いますが(笑)それもまた、今の自分を作ってくれた大事な経験だったと思ってます。

-学校を卒業されてパリに行かれたきっかけは何だったんですか?

いわさ:ずっと行きたいと思っていたパリに、ひとり卒業旅行として二週間行ったのが初めての渡仏でした。当時は初めてのパリで、気になっていたパティスリーやパン屋を回ったり、食文化だけではなく街中目に飛び込んでくるものがときめくものにあふれていて、ここにもっといたい、観光じゃなくて住む場所としてきたいなと強く思ったのが最初のきっかけです。

フランスから帰ってきたあとは「卒業したら、その時アルバイトしていたお店でもっとがっつり働こうかな」なんて単純に思っていたのですが同時期に東北大震災が起こり、お店で働き続けるのは難しい状況になってしまって。

そしてその後間もなくお付き合いしていた人と一緒にお店をやろうという話が出て、フランスにいくことをあきらめたわけではないけど、その人といることを当時は優先したんですよね。自分たちの名刺を作ったり、お店のオープンに向けて一生懸命準備していたし、ずっと夢だったことを実現するためにやっと舵をきれた気持ちでいたのですが、色々な事情があってその彼とは別れることになりお店をオープンすることも白紙になって、、、とても気持ちも落ち込んだし、毎日毎日それはもうめそめそ泣いてました。

でも、一度はお店をやる!ってスイッチが入っていたので、そのまま全てをストップするという気持ちにはなれませんでした。なので「とりあえず作ってしまった名刺を使いきろう。名刺を使いきったら、ビザを取ってフランスに行こう。」って決めて、個人のフードスタイリストとしての活動をスタートしました。

-名刺を使い切ろうというのが目標で個人名義での食の仕事をスタートされたんですね!どんな仕事からはじめたんですか?

いわさ:ひたすら相談してもらったことベースに答えてました。料理を教えてほしい、料理しにきてほしい。とにかく自分がその時に答えられることはなんでも色々とやりました。

当時は自信がないことや不安なことも「できます!」って言っていました。今思うと恥ずかしくなる図太さですが(笑)そう言わないと仕事が来ないかも、くらいに思っていました。”やれたらいいな”じゃなくて、”やる”っていう自己暗示を自分にかけていて、パリ行きに関してもあきらめる余地を自分に与えないよう周りの人に「1年後にはパリに行きます。」って言いながら仕事していました(笑)

そうやって自己暗示をかけると同時にいざ本当に欲してもらったときに『恥ずかしい自分でいたくない』という気持ちが強くなって、この頃は時間とお金は全て料理やお菓子の試作に使っていました。プライベートで外食や旅行や、なんかを楽しむ隙間もつくらないような状態で本当に毎日がむしゃらでした。

ただ、自分の名前で仕事としてやっていく、と思った瞬間に出会いが不思議なくらい増えたなと思います。そこからお金の準備やビザ申請も進めつつ、一年半ほど経ってようやくパリへ出発しました。

お金がなくても好きなものだけ散りばめて暮らすパリの人たちの暮らし方

-念願のパリでの生活はどうでしたか?

いわさ:実はそんなに順風満帆ではなく、ただパリにいるっていうだけで仕事も住むところも色々問題が起き続け、あんまりうまくいかなかったんです。それなりに十分貯めたと思っていたお金もどんどんなくなって、時間だけがどんどん過ぎていって、何をしにきたんだろうっていう焦りの気持ちと、言葉も全然うまく話せないし、パリに来てよかったって思えない自分がどこかにいました。

ただそんな中で例えばどんなに小さな部屋で生活していてもお花を一輪買って部屋に飾るとか、お金をかけるかけないじゃなく、好きなものだけ散りばめて暮らす方法をパリの人たちの暮らし方からいろんな形で教わりました。

いわささんはご自宅にもいつもお花を飾っているそう

-一回目のワーホリからパリと東京を行き来しながらの暮らしはどのようにして始まったのですか?

いわさ:ワーホリから帰ってきた時は、また振り出しに戻ったというか、まっさらなスタートを切る気持ちでした。そこから細々と信頼できる人からの紹介やご縁でお仕事をいただいて、、、なんてしている間にあっという間に2年がたち、ふたたびパリへ行く時間を作りました。パリでの生活の感覚を忘れたくなくて年に1回1ヶ月くらいはインプットの時間を自分のために作りたいと思うようになったのがこの頃です。

その話をパリで出会った友人にしたら、「せっかく行くんだったらパリ滞在中に仕事を作ったらどう?」と言ってくれたのですが、当時の私にとってはそんなことできたら素敵だけど自分には難しいのでは?という気持ちと、チャンスがあるならやってみたい!と思う気持ちと半々だったのですが、パリで出会った友人を通じてファッションブランドのプレスの方へつなげていただき、パリコレ期間中のケータリングなどのお仕事をいただくことになりました。そこからパリと日本を往復しながら暮らし働くというスタイルをスタートさせていきました。

食事を作ることというよりも、食をどうやって楽しんでもらうか

-最初から仕事があったわけではなく、せっかく行くならと仕事を作りだしたなんてすごいですね!

いわさ:周りの人に本当に恵まれているなと思います。出会う方々のおかげで機会にも恵まれたと思うし、20代の頃は特にその年齢だから多めにみていただいたことも面倒をみていただいたことも沢山あったと今となっては思います。

そういえばずっと昔、憧れの料理家さんのアシスタントになりたくて、当時は今ほど気軽にDMが送れるSNSもなかったのでその方のレシピ本の出版社の方にお手紙を渡してもらいたいです!ってお願いして封筒を手渡しにいったこともありました。

どうしたらこの職業につけるのか色々考えてみたけどその時はそんなアナログな方法しか思いつけなくて(笑)ただ、今となっては、例えば自分がそういうお手紙をいただいたとして、ありがたいけども簡単に答えられるものではないこともよくわかります。

なりたいことを叶えていく方法は誰かが教えられるものではない気がして。失敗もたくさんしながら、自分の方法で実らせていくことがきっと後々の自信にもなっていくのかなと思います。

あと実は私自身そんなに要領は良くないほうなんです、、、カフェやレストランで働いている時も決してできるスタッフではなかったし、学生の頃だって周りの子より飲み込みも遅く実技試験の評価も決して良いほうじゃなかった。ただ、美味しい味や感触をジャッジすることには自信があって、自分の好きな感覚は絶対信じたいなって、強い思いがありました。

-そのチャンスをつかむための行動力ってなかなか普通の人はなかなか勇気が出ない気がするのですが、いわささんの行動力はどこからきているんですか?

いわさ:うーん。なんとなくですが人より危機感を感じるのがうすく、焦ったりすることが少ないところかなと思います。呑気な性格なんだと思います(笑)だから人が諦めたり、躊躇することをどんどんやれるのかなと思います。

仕事においてもそういう性格に助けられていて、まずは自分が力まないというのが一番相手のリラックスにもなるのかなと思っています。レッスンなんかでもリラックスしてもらうことを重要視しています。食って癒しの時間で心をほどくタイミングだと思うので、おいしいものを作るっていうのは大前提で、まずは自分がリラックスして作ったり、そこにいることが大事かなと。

食事を作ることというよりも、食をどうやって楽しんでもらうかということを意識しています。

-最近ではPOP UPレストランなど食だけはなく、いわささん自身がエプロンのプロデュースなどされたりしていますね

いわさ:はい。前からただお皿のうえの提案だけではなく、食に関する様々なシーンの提案ができたらなぁと思っていました。私自身、自分自身のためにいつだって気分のあがるお洋服とお化粧してキッチンにたってたいというのがあるんですよね。ちょっとしたジンクス的な感じなものなんですけど、なくてもいいけどあったほうが高まる!っていうのを大事にしたいなと。

ワーホリでパリに暮らしていた時、とある大好きなお店で買ったエプロンがあるのですがそのエプロンは鮮やかなピンクで。その当時には奮発して買ったのですが、何度も洗濯しても5年間も使えるほどに丈夫で、つけるたびになんだか嬉しい気持ちになるものでした。

何度もこれにしてよかったと思ったし、これを纏っていたらなんだか美味しいもの作れそう!という気持ちが湧きでていました。

それがとうとう使えないほどくたびれてしまってから、新たなエプロンをずっと探していたのですがなかなかなくて、、、そこから自分でプロデュースできたらいいなという妄想をきっかけに今回実現することになりました。

色々なこだわりがつまっているのですが今回色の名前にもちょっとした思い入れがあります。

たとえば今回私がどうしても作りたかった色のフランボワーズは、パリに行ったらいつもかならず行くモンマルトルのヴィンテージショップで、何年か前に鮮やかなピンク色のコートを買ったとき、お店のマダムの「これ、ピンクじゃなくてフランボワーズ色よ」って言葉にすごくときめいた思い出があって。今回色を説明するワードもそんな感覚を散りばめながら名付けています。

いわささんのプロデュースしたフランボワーズカラーのエプロン
※いわささんのエプロンWEB販売はこちら

自分の好きなものに敏感であるということの大切さ

-これからフードスタイリストや食に関わる仕事をしたいなと思う人へのアドバイスはありますか?

いわさ:自分の好きなものに敏感であるということかな、と思います。何がうれしくて、どういうときにリラックスするのかという、自分の観察ですかね。

人に押し付けるのではなくて、作り出すものでアウトプットする。人に合わせるのではなくて自分の軸を作る。何が自分を喜ばせるものなのか知れて初めて、自分にしか作れないものを作れるのかなと思います。

ときには周りと比べたり、焦ったり、こうしなきゃって思ってしまう瞬間も人によってはあるかもしれません。だけど、まずは考えすぎず。自分の作り出すものに、共感してくれる方に欲していただけたら、それでいいかな、と思えるくらいに、自分の感覚を大切にしてほしいです。

私も昔はもっともっと自分のことを見れていなかったけれど、自分自身にフォーカスする時間をここ10年ほど無意識に増やしていった気がします。こんなふうに人に話せるようになったのはここ1.2年でパリと日本を行き来するようになってから、自分のことを俯瞰して考える時間が増えたというのも大きいと思います。

悩むことも落ち込むことも、時にはもちろんあるけれど、その度に救ってくれる大切な友人たちも気づけば沢山まわりにいてくれて、本当に大切に思うし、感謝の気持ちをたくさん伝えるようにしています。

色々な考え方の人がいるので、自分の選択することに対して時には否定的な意見を受け止めることもあるかもしれません。だけど、自分のことを決めていくのは自分。経験をしないかぎりわからないことだって沢山あるはずなので、失敗や傷つく経験は豊かさや優しさの材料にいつか変わるかなと。『あなたがいい』と思ってくれる方との出会いを、見つけていってもらえたらと思います。

-色々なお話ありがとうございます!最後にこれからのいわささんのやりたいことなどありますか?

いわさ:自分の中のテーマのひとつに「女の子の味方」になるような発信をしたいなと思っています。たとえ得意でなくても好きな人に何か作ってあげたい、とかそういった純粋な気持ちに寄り添える存在になりたいです。

たとえば料理の盛りつけやケーキのデコレーションやラッピングだって、上手かどうかよりも自分なりにかわいくできた!って思えたら、それを自信にしてほしいし、嬉しいなかわいいな、楽しいなっておもえるかどうかを一番大事にしてほしいなと。

暮らしの彩りかただって難しい知識やお金がかかることではなく、ワインの空きボトルに花を一輪さすだけとかで部屋も気持ちも明るくなると思うんですよね。そのくらいちょっとしたことでご機嫌になれるような、女の子たちが真似しやすいような食や暮らしの提案ができていけるといいなと思います。