はじめまして。フラワースタイリストの守屋百合香です。パリと東京を拠点に、花仕事をしています。二つの都市を行き来する暮らしを始めて五年ほどになりますが、フランスの人々の暮らしには、花がごく自然に息づいているように感じます。今回は、私たちの暮らしに花を取り入れる、簡単なコツをご紹介します。難しい知識も技術も必要ありません。おうちにあるものを花瓶にして、まずは一輪から、始めてみませんか。
花の選び方
いざ花屋に行ってみても、どんな花を選べばいいのかわからなくて困ってしまうという方もいらっしゃるかもしれません。そんなときはまず、「旬の花」を選ぶことを意識してみてください。花を選ぶのは、野菜や魚を選ぶのと同じ。夏のズッキーニや秋のさんまと同じように、花も旬のものが一番輝いているし、生命力に溢れ、実際に花もちも良いものです。
ちなみに、今、市場に並ぶ花たちは春から初夏へと移り変わるころ。4月に私がおすすめしたい花はすずらんです。
すずらんは、フランスでは「ポルト・ボヌール」=「幸福を運んできてくれる花」として親しまれています。特に根っこつきのすずらんが出回るのは短い期間ですが、毎年私自身も楽しみにしています。
また、もう少し季節が進んでくると、ばらが旬を迎えます。一年中手に入るイメージのばらですが、初夏と秋のばらは、芳香も溢れんばかりに豊かになります。
一口にばらと言っても、様々な品種があります。ぜひ初夏になったら、ご自身のお気に入りのばらを見つけてみてください。人気の高い芍薬も、これからが旬です。
夏は花もちが良くないと敬遠されがちですが、カラー、百合、アンスリウムやひまわりは暑さに強い花ですし、ローズマリーやゼラニウムなどのハーブ類も、爽やかで、おすすめです。
秋になれば、赤や黄に色づいた葉ものや、実ものが美しい季節。日本では梅雨のイメージが強いあじさいも、秋色あじさいといってアンティークカラーに色づいた大人っぽいものが出てきます。
冬はアネモネやチューリップなどの他、クリスマスリースにも使われる針葉樹やユーカリなどがあります。寒い外からおうちに帰ってきたら、森の中にいるような澄んだ香りを楽しんでください。
おうちにあるものを花瓶にするアイディア
花をおうちに飾ろうと思っても、花瓶がなくて飾れないという方もいらっしゃるかもしれませんが、おうちにあるもので素敵に飾ることができます。そんなおうちのものを活用するアイディアをいくつかご紹介します。
水差し
口径が広い水差し(ジャー)は、テーブルを彩る花を飾るのにもぴったり。
同様に、砂糖などを保存しておくガラスや陶器の容器(キャニスター)も使いやすいです。
ガラスの空き瓶
ワインボトルやジャムの空き瓶も、一輪挿しに。気に入ったラベルのものがあれば取っておきましょう。色付きのものや透明のもの、高さの違うもの、飾りたい空間に合わせていくつかあると便利です。
花瓶の大きさ別での生け方のポイント
では最後に花を生ける際のポイントを。ポイントは入れる口の大きさ=『口径』と入れるものの『高さ』のたった2点です。それぞれのパターンでのバランスのとりやすさがあるのでそれを意識しながら、ご自身の好きなバランスで自由に生けてみましょう。
口径が広い花瓶
口径が広い花瓶は、一方向に流すように花を生けます。花一本一本の向きを見ながら、高低差をつけて生けていきましょう。
口径が狭く、背が低い花瓶
いろいろな方向へ、のびのびと生けてあげるとバランスが取りやすいです。アイビーやジャスミンのように、しな垂れるタイプの花もおすすめ。
口径が狭く、背が高い花瓶
口径が狭いと本数をたくさん入れられないので、一本で枝分かれしていて、ボリュームのある花を選ぶことがポイント。二つ以上並べて高低差をつけると、リズム感が生まれます。
また、一つ一つの量が少ない分、思い切ってカラーコントラストをつけてもうるさくなりません。あえて普段選ばないような色にチャレンジして遊んでみるのも楽しいです。
飾る場所
お好きなところに飾って自由に楽しむのが一番ではありますが、花もちを考えるのであれば、空調の風が直接当たるところや暑いところを避け、日当たりの良いところを選びましょう。基本的なことですが、水中のバクテリアの繁殖を防ぐために、水替えや*切り戻しが長持ちのポイント。また、より鋭利に茎を切り、道管を潰さず水の吸い上げを妨げないために、文具用ではなく花専用のハサミが一つあると便利です。
*切り戻しとは
茎の断面は、水に浸かったままだと次第に腐っていきます。茎の先端を少し切り、断面をきれいに保つことを切り戻しといい、水中のバクテリアの繁殖を防ぎ、花に水をしっかり吸わせることができます。
おうちで過ごす時間が増えている今、暮らしを豊かにしてくれる花の力をますます感じる日々です。花があることで、日常風景が彩り豊かなものとなり、おうちの中でも移りゆく季節を感じていただけたら嬉しいです。